まずいですよ!急な痛みにその対処!

先日ある方が腰痛でいらっしゃたのですが、ご自身でなされた対処がまずかったために、大変しんどい思いをされた、ということがありました。
 
医療従事者・徒手療法家にとっては当たり前ですが、意外に一般的にはありがちな間違いのようなので、再度確認していただく意味を込めて記事にします。
 

どんなことをしてしまったのか?

その方は家の掃除の際に脚立から落ちてしまって腰を強打して腰痛がでてしまっていたのですが、何とあろうことか我流で腰の筋肉を伸ばしてしまった挙句、温めた方がいいだろうと湯船にじっくりとつかり、さらには痛みで寝付けないからと寝酒までしてしまいました。
 
当然のことながら、翌朝腰に激痛がでて、起き上がりも立ち上がりも歩行もしんどくなる結果に。傘を杖代わりに何とか当院までいらっしゃいました。
 
お話を聞いて真っ先に頭に浮かんだのは腰椎の圧迫骨折でしたが、痛みが出ている部位や周辺を押したり軽く叩打してみても、響くような痛みは出ないとのことで、一先ず痛みの候補からは除外しました。
 
患部周辺は皮膚の色こそ周りと大差はなかったのですが、とても熱くなっており濡れタオルを当てるとすごくひんやりして楽とのこと。酷い炎症が起きているのは間違いありません。
 

炎症とは

炎症は身体が有害な刺激を受けた際に免疫系等が応答し、傷ついた部位を修復するために、血管を拡張し、化学物質の分泌が盛んになっている状態です。
 
このときの痛みの原因は、組織の受けた損傷そのものに加えて、ブラジキニン、ATPやプロトンなどの発痛物質や発痛増強物質のプロスタグランジン、炎症性サイトカインなどが放出され、絶え間なく自発痛が発生し、さらに侵害受容器の過敏化により痛覚過敏が生じることによります。
 
通常は48時間~1週間程度で鎮静化する修復のメカニズムではあるのですが、炎症が過剰だと痛みがひどくなったり、治まるまでが長期化する恐れがあります。
 

まずは炎症を抑えることが第一

上に書いた通り、炎症は血管の拡張と化学物質の分泌で生じる反応ですから、速やかに鎮静化させるには血管の拡張を鎮める必要があります。
 
このときの基本は「冷却」です。
 
よくコールドスプレーを10~20秒程度吹いてそのままにしたり、すぐに動きだしたりする人がいますが、これではあまり意味がないどころかかえって悪化させてしまう恐れがあります。
 
冷却は持続的に、最低限表皮の熱感が取れるまでは行うべきです。
 
但し、冷却スプレーや氷のうなどの比較的短時間で強い冷却効果が出るものについては、凍傷を防ぐために適量にとどめる必要があります。氷嚢を当てるときは10分以内でなおかつ1日に3回を上限とし、スプレー類ならば使用上の注意に従えば問題はないかと思います。
 
安全に行うのであれば、冷水に浸して絞ったタオルをこまめに交換する方法が手軽でしょう。冷却後に消炎作用のある湿布薬を貼ると、さらにグッドです。
 

炎症時に、温める・伸ばすはNG

逆に血管を広げてしまう加温や運動は絶対に避けてください。
 
また当院にらっしゃた方で、炎症が起きているにもかかわらず近所のもみほぐし屋にいって痛む場所を揉んでもらい、後から酷い痛みが出てしまったかたもいますが、炎症があるときはこうした患部を直接刺激する行為も厳禁です。
 
こうしたことをしてしまったばかりに痛みがひどくなったり、長期化する人が、意外に多くいます。
 
また、炎症は組織の損傷がセットですので、壊れた組織を伸ばしたり揉んだりすると、さらに組織の傷が広がり悪化するのはお分かりいただけると思います。
 

急性の痛みの場合は、まずはお医者さんに

なによりも、転倒・転落・事故・その他の急な痛みが出た場合は、まずは整形外科を受診することをお勧めします。
 
こうした痛みには骨折などの重篤な怪我があることが多いのですが、こうした怪我はレントゲンやMRIなどの画像診断がないと確実に判別するのは困難です。
 
以前聞いた話ですが、下部肋骨の不全骨折が潜んでいた(ひびが入っていた)にも関わらず外観上の変形がなかったため安易に揉んでしまい、結果ひびが入っていた箇所が折れてしまった、というケースを聞いたことがあります。
 
 
まとめ

・炎症に対しては「安静」「冷却」が対応の基本である。
・血管を広げてしまう加温・飲酒・運動は厳禁である。また、組織についた傷を広げるような無理なストレッチや揉みほぐしも厳禁である。
・なにより急な痛みが出たときは、まずは医療機関を受診し、骨折などの重篤な怪我がないかを確認するべきである。治療院にくるのはそれからでも遅くはない。

 
以上が炎症を伴う急性痛の対処の基本ですので、ぜひ頭に留めておいてください。
 
 
追記

因みに上に書いた患者さんですが、ともかく熱感が酷かったので10分ほど繰り返し濡れタオルを当てて冷却したうえで、キネシオテープという筋機能をサポートするテーピングを貼って筋の負担を軽減したところ、起き上がりや立ち上がりが随分と楽になり、帰りは杖なしで歩けるようになりました。
 
帰り際に必ず整形外科を受診するようお伝えしたところ、2日後に受診の結果骨には異常がなかったとのご連絡を頂き、ホッと胸を撫で下ろした次第です。

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