腰の張りと太腿の緊張の関連

先日腰の症状で興味深い患者さんがいらっしゃいました。
 
その方は運送会社でトラックの運転をされているOさん。
 
普段から腰の張りに悩まされていて、毎日の運転業務と趣味のゴルフの後は特にツライとのこと。
 
動きを見せてもらうと、前にお辞儀するのは痛みはないのですが、後ろに反ると張りが強まって痛みが出てしまいます。
横や捻りの動きもしんどいとのこと。
 
腰の症状というと、昨今は腸腰筋(お腹の左右にある筋肉)が取りざたされることが多いですが、この方は腸腰筋を緩めてみても痛みは半減もしないとのこと。
 
そこで腰の張りというポイントをもう一度考えてみました。
 

腰が張るって、どういうこと?

腰が張るということですが、特につらいのは後ろに反る動作とのこと。
 
後ろに反るときに腰が張るということは、腰背部の筋肉が過剰に緊張していることが考えられます。
 
場所としては下後鋸筋か腰方形筋の上部、もしくは脊柱起立筋の胸腰椎移行部近傍の線維でしょうか。
 
さて、胸腰椎移行部という単語が出ましたので、少し解説します。(飛ばしても大丈夫です)
 

脊椎は頸椎(首)・胸椎(肋骨の高さの背中側)・腰椎(腰)・仙椎(骨盤部)という4つの部位に分かれています。
 
脊椎は、仙骨を1個の骨とした場合全部で25個の骨(椎骨)から構成されますが、この4つの部分で動きの方向は全く異なります。
 
頸椎は割に自由度が高く、前屈・後屈・側屈・回旋の各方向にある程度の可動域を有します。
 
胸椎は主に前後屈の動きと回旋の動きがあり、側屈の動きは乏しくなっています。
 
腰椎は前後の動きは大きく側屈はある程度ありますが、回旋の動きはほとんどありません。
 
仙椎(仙骨)は細かいところは抜きにして考えれば、骨盤と一体化した動きをすると考えていただいて結構です。
 
こうした各部で動きに特徴があるのが脊椎ですが、各部の境目・移行部は動きの方向が大きく変わり、この動きの違いを補うためにために余分に動く必要があストレスが掛かりやすい箇所でもあります。
 
胸腰椎移行部も例外ではなく、腰仙椎移行部と並んで痛みを出しやすい場所でもあります。

 

Oさんの場合、何をしたか?

Oさんの症状に話を戻します。
 
Oさんのケースでは、後ろに反ったときにピンポイントでの鋭い痛みではなかったので、脊椎もしくは脊椎の椎間関節自体の障害ではないと推察しました。
 
恐らくは、下後鋸筋か腰方形筋の上部、もしくは脊柱起立筋の胸腰椎移行部近傍の線維といった、腰椎に対して胸郭を後ろに引く筋群の収縮に伴う痛みと考えられます。
 
そうすると、胸郭を無理に持ち上げようとして過剰に収縮しているのが原因であると思われます。
 
頭や肩が前に突き出ているなど胸郭より上で重みが前方にかかっていることも考えられたのですが、それだと後ろに反って重みが後方に移動すれば、症状は軽くなるはずです。
 
とすれば、重みの問題というよりは脊椎の角度の問題ではないか、と考えました。
 
具体的には、骨盤の前傾→腰椎の前方傾斜→胸腰椎移行部での代償性の過剰伸展、というメカニズムで問題が起きているということです。
 
骨盤を前傾させるのは主に股関節の屈曲の筋肉です。
 
例を挙げると、腸腰筋・大腿筋膜張筋・一部の股関節内転筋群・大腿直筋です。
 
先に腸腰筋を緩めましたが、あまり効果がなかったのは上に書いた通りです。
 
そこで大腿直筋(ふとももあたり)に当たりを付けてみました。
 
試しに太ももの前や外側を指圧してみると、痛みで逃避反射が出ます。どうやら間違いないようです。
 
ここからはゆっくりとした圧やストロークでの大腿直筋以外の大腿四頭筋のリリースを行ったところ、腰の張りはすっきり消えてしまいました。
 
 

なぜ大腿四頭筋は固くなってしまったのか?

症状は消えましたが、ではなぜ大腿四頭筋が固くなってしまったのでしょうか。
 
一つは運送業という仕事での負担が考えられます。
 
長時間の運転は、坐位の時間が長いということです。
 
坐位が長いと股関節は屈曲の状態が続きますので、股関節を屈曲させる筋群は短縮しやすくなります。
 
また、運送の合間では荷物の上げ下ろしもありますので、ここで腰を落として踏ん張る作業が続くと、どうしても太ももの前の筋肉は張ってきます。
 
加えて趣味のゴルフで股関節深部の故障が潜んでいたことも影響していたようです。
*ゴルフと股関節の故障の関係については、後日記事にしたいと思います。
 
この日の施術では、この後股関節の調整まで行い、股関節と太腿の筋肉のセルフリリースをお伝えして終了としました。
後日再診の際には再発もなかったとのことで、一先ず経過観察していきたいと思います。

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