ぎっくり腰や寝違えの施術を行う前に

前回の記事でぎっくり腰や寝違えの原因について考察してきました。
 
ここで施術の進め方について述べたいところですが、その前にこうした急性症状に対する対処について基本的なことを見直してみたいと思います。
 
ここからは施術家向けの少し難しい内容になりますが、こうした症状に悩まされている方にも参考になると思いますので、読んでいただければと思います。
 

施術する前に行うこと

私がこうした症状の施術に入る場合は、まず「徒手療法で対処するべき症状か?」ということを確認します。つまり、整体で対処するべきことなのかどうかを調査するのです。
 
急性に起こる痛みは様々な原因で起こりうるものですが、その中には骨や内臓・血管系の異常が隠れていることがあります。
 
例えば転倒やむち打ちなどの強い外力が掛かって症状が出た場合は、靭帯や腱の損傷、最悪の場合骨折もありえます。
 
こうした受傷機転がある場合は、当院ではまず整形外科で検査を受けていただくことにしています。
 
また、座ろうが横になろうが姿勢を変えても変化のない痛みや、激しい頭痛を伴う場合は、内臓系や血管系の異常の可能性がありますので、急性でなければひとまず施術に入りますが、内科の受診と併用していただくようにしてます。
 
こうした異常は医療機関での検査を受けないと明確に判別できないものが多く、仮に徒手療法で一時的に痛みが軽減したとしても、後で取り返しのつかないことになる恐れがあります。
 
特に昨今は科学的な根拠・裏付けもなく「内臓治療できます」「癌が回復した方もいます」などと謳う治療院もありますが、よくよく話を聞いてみると自覚できる症状が軽減しただけで疾患そのものは変化を出せるわけではない、というケースも少なくありません。
 
また、炎症が出ているケースや靭帯や腱の損傷に対して徒手療法を用いることで症状が軽減したという話も耳にしますが、傷ついた組織が外から力を加えることによって修復が早まることはありません。
 
むしろ場合によっては、施術で緩めることで損傷し脆弱になった部位を不安定化に晒すことになり、悪化のリスクになることもあります。
 
但し、炎症や筋攣縮の長期化を避けることで2次的な組織へのダメージ・障害を軽減し、結果として症状の長期化を防ぐことは可能です。
 
施術家がこの辺りをきちんと線引きして施術に当たるのであれば、リスクは少なくできます。
 

つまりまとめると・・

施術を受ける立場から考えると、①施術でどこを緩めたのか・及び緩めたことによるリスクの説明、②損傷下で緩めることに対するテーピングなどのサポート(最低限口頭での注意があった)、③急性期での生活指導、この3点がきちんと説明されていれば、その施術家はきちんと状態を把握してうえで施術を行っていると思います。
 
まとめると、
 

 ・組織の損傷を伴っていないことがはっきりしている
 ・内科系の異常が関係していない
 ・施術によるリスクをコントロールできる

 
というのが、施術院での介入の条件だと言えます。
 
徒手療法は組織の損傷・変性を伴う急性症状に対しては万能ではありません。
 
スポーツの場面などで、ある臨床家が治療に入ったことで故障から極めて短期間で復帰した、という話が聞かれることがありますが、こうしたケースはリスクと隣り合わせであることを施術をする側・受ける側の双方が承知した上で行われていることを留意してください。
 
また、テクニックのみで対処したように言われることもおいですが、現場ではきちんとテーピング等の処置も併用して行われています。
 
癌などの内科的疾患で整体系の徒手施術を医師の指導のもとで行うことがありますが、こうしたケースでは根治ではなく症状の緩和で用いられているか、明確なリスク管理のもとで他の投薬などの治療と併用して補助的に行っているケースが殆んどです。
 
医療機関での治療ですべての患者が改善しない現実があるように、徒手療法もまた万能ではありません。
 
重要なのは医療機関・徒手療法家がそれぞれの互いのメリット・デメリットを理解し、相互にフォローできるように取り組むことだと考えます。
 
このメリット・デメリットには、治療効果だけでなく制度的な面も含みます。
 
医療機関では検査結果をもとに多角的に症状を分析して対処することが可能ですが、徒手療法の得意分野である細かい組織へのアプローチや時間をかけたアプローチは難しいです。また、診療報酬の制度上、あまり長い期間診てもらい続けることは難しいです。
 
一方で自由診療の治療院では当然検査はできませんし、湿布一枚処方することもできません。ですが、一回の施術にじっくりと時間をかけて細かい個所まで自分の手をセンサーに判別・施術することができますし、医療保険制度でいう診療期間の制限もないので、継続的にコンディションの確認と調整を行うことができます。
 
こうした医療機関と治療院の相互が持つメリット・デメリットは患者さん自身も理解し、うまく組み合わせるようにしていくと、よりリスクが少なく効果的な介入ができるようになります。
 
そのための情報発信や啓蒙活動も、医療機関出身の私の使命だと考えています。
 
*当初の内容よりも長く広範になってきたので、ぎっくり腰・寝違えの施術の実際については、次稿に回したいと思います。

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